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ノドチャミユビナマケモノ

学名 : Bradypus variegatus
英名 : Brown-throated sloth

IUCNレッドリスト基準

低懸念(LC)

ホンジュラスからブラジル、ボリビアを含む中南米の熱帯雨林の主に樹冠で一生を過ごす哺乳類。

生息地・生息環境

ノドチャミユビナマケモノは中南米のホンジュラスからニカラグア、コスタリカ、パナマ、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ペルー、ボリビアの熱帯雨林の中にあって海抜ゼロ地点から2,400mまでの標高の範囲の場所で見られ、半落葉性樹林や亜熱帯の低地や湿地でも発見されています。一生の大半を樹冠の中で過ごします。彼らは生息する樹木の種類は選ばないものの、樹冠に日光がよく当たる樹木を探し求める傾向にあります。この嗜好性から、ナマケモノには体温調節を行う必要性があり、その必要性を満たすために日光を利用しているからであると考えられています。
ノドチャミユビナマケモノは泳ぐこともできますが、地上を移動することはめったにありません。

特徴

ノドチャミユビナマケモノは、喉と頭が茶色い色をしています。体毛は、短くて細い柔らかい毛皮の層と、厚い羊毛のような毛皮の層から成ります。外側の層には藻類が共生していることが多く、個体によっては緑がかって見えます。本種の前肢は長く、各肢には鉤爪がついた指が3本あります。また、約10個の頸椎があり、この頚椎のおかげで首を270度まで回転させることができます。歯は円筒形でエナメル質がありません。多くの有蹄類と同様に胃は多区画化されていて、もっぱらの菜食主義食により取り込まれたセルロースは腸内細菌叢の助けを借りて消化されます。
ノドチャミユビナマケモノは内温動物でありながらも、寒冷な環境や周囲の気温が低い状況では体温調節を行うことは困難です。これは、(1)筋肉量がまばらであること、(2)心臓が比較的小さいこと、(3)心拍数が低いことが原因であると考えられています。成体の体重は3.49kgから5.19kgで平均4.34kgです。平均体長は60cmで、基礎代謝量を示す酸素の流量は1時間あたり147 cm³です。この種では大きさについての性的二型はありませんが、オスにはメスには無い鳥の翼鏡のような模様(a mid-dorsal speculum)が背中の中央にあるのが特徴的です。ノドチャミユビナマケモノの眼には毛様体筋がなく、神経節細胞と神経線維が非常に少ないため、視力が低いです。エビデンスからは、視覚は低照度において最も適切に機能すると示唆されています。
本種の1日あたりの睡眠時間は14時間から16時間であり、昼行性と夜行性の両方があります。1日の活動時間は約8時間から10時間で、通常2時間から3時間ごとに区切られています。最も活動的なのは12:00から18:00の間で、ほとんどの個体は06:00から12:00の間に眠ります。そして、ノドチャミユビナマケモノは2つの異なる休息モードを示します。1つ目は、活発に目を開けてまばたきをしている「覚醒 - 警戒」状態であり、2つ目は、目を閉じているが木にぶら下がっている「行動睡眠」状態です。
ノドチャミユビナマケモノの平均的な行動圏は2ヘクタール以下です。この種の行動圏に関する情報はこれ以上はありません。通常、成体が他の成体と同じ樹上で観察されたことはありません。同種の間で敵対的な行動をとることは比較的稀ですが、縄張りや食物、その他の資源を保護することに躊躇は有りません。ノドチャミユビナマケモノの成体間の社会的相互作用は比較的稀です。しかし、母親と子どもの間のコミュニケーションは重要であり、特に発声の形を取って行われます。また、繁殖期には、メスが交尾相手となるかもしれないオスを呼び寄せるように、同種の他の個体とのコミュニケーションにも発声が使われます。排便と排尿は地上で行われ、どちらも同種の他の個体とのコミュニケーション手段として機能していることが示唆されています。
野生ではノドチャミユビナマケモノの成体の寿命は一般的に30年から40年です。この種の寿命に関するその他の情報は得られていません。

食べもの、栄養

ノドチャミユビナマケモノは、完全な草食動物であり、主にCercropia属の樹木(例:embauba)を食べます。葉、花、果実など、木の様々な部分を摂取します。ノドチャミユビナマケモノは条件的に飲水する動物であり、ほとんどの水分は、摂取した植物性物質から得ています。

生殖・繁殖・増殖

ノドチャミユビナマケモノは、一夫一婦制であると考えられています。
メスは交尾の準備ができると、声を出してオスの興味を引きつけます。一般的に、メスは最初に出会ったオスと交尾します。彼らに明確な繁殖期があるかどうかは定かではありませんが、雨季の直前に交尾が行われることを示唆する証拠があります。交尾はメスがいる木の上である地上約15mの高さで10分から15分間に渡り行われ、交尾中はオスはメスの背後に位置します。そして、交尾が終わると、オスはその直後、すぐにその場を去ります。
ノドチャミユビナマケモノは、1年に1度、1匹の子どもを産みます。妊娠期間は5ヶ月から8ヶ月で、この間、母親は巣作りなどの準備はしません。本種は樹上や地上で出産します。出産の間、母親は自分の後肢の間の乳児を引っ張り、他の個体は母親と乳児をきれいにしたり、乳児が落ちないようにしたりして、出産を助けます。母親は、幼い子供が、運動行動、姿勢、学習発達や、自立的な探索行動を確立することを助けます。本種は、父親は子どもの育児は行わないと考えられています。ノドチャミユビナマケモノは、出産後、新生児は腹側で抱かれますが、このことは外敵からの攻撃を含め、子どもを守るのに役立つと考えられています。新生児の出生時の体重は1kgに届きません。ほとんどの個体は離乳が完了すると自立しますが、それには約4ヶ月かかります。
メスは3歳までに性的に成熟し、オスは3歳から5歳、平均4歳で性的な成熟を完了します。